髙村 えり子

ママほぐ 代表

『ゆっくりお母さんになる、を見守られるマチへ』

2019年12月6日付で「産後ケア事業」の実施を市区町村の努力義務とする改正母子保健法が成立し、2021年度からは、茅ヶ崎市も産後ケア事業がスタートしました。
 2020年秋に実施した産後6ヶ月までの子育て実態調査※1 では、“子育てはお母さんが頑張るもの”という考えが根強いことや、本人が産後ケアを希望しても、家族や周囲の人間が理解に乏しくそれを受け入れないケースがあることがわかっています。
 茅ヶ崎市での産後ケア事業が始まりはしましたが、行政の仕組みだけが先行し、お母さんやそれを取り巻く周囲の方々の理解が深まらなければ、産後ケアは根付いていかない、と言えます。

 また、アンケートでは、茅ヶ崎市のお母さんは産後困ったこと、辛かったことの上位に、

○寝られない…79%
○ゆっくり食事がとれない…61%
○精神的に塞ぎ込む…54%


という結果になり、肉体的、精神的負担が非常に大きいということが明らかになっています。それに加え、核家族化や地域からの孤立、高齢出産の増加など、母子を取り巻く環境は大きく変化しています。

加えてに、虐待相談対応件数は年々増加し、
○平成29年度は65人の子供が虐待で死亡
○死亡した子どもは0歳が53%と最も多い
○さらに内50%を月齢0ヶ月児が占める ※2
というデータが発表されています。

お母さんと赤ちゃんを取り巻くこのような環境は、果たして“安全で安心な子育てができる”と言えるのでしょうか。

私の産後は孤独の中にいました。
赤ちゃんをかわいいと思えず、泣く赤ちゃんを抱っこしながら、自分が泣く元気もなく、一日が早く終わることを考えていました。

お母さんにお伝えたいことは、
子育てはひとりでしなくていいよということです。


私は赤ちゃんを産んだら、産んだその日から思い描いていた『お母さん』になれると思っていました。ショッピングモールのフードコート、電車の中、見慣れた街の風景に『お母さん』って普通に居ますよね。でも実際は、いきなり『お母さん』に私はなれませんでした。


帝王切開のお腹の痛み、3時間置きの授乳、思い通りに動かない身体に加えて、赤ちゃんがなんで泣いているのか解らない。心がどんどん塞ぎこんでいきました。
けれども、いきなりお母さんになる必要はないんです。
失敗や『今日はなんとなくいい感じだなぁ』を繰り返しながら、赤ちゃんとお母さんの関係は少しずつ出来上がっていきます。お母さんと赤ちゃんの関係が出来上がっていく上で、とても大切なのは、パートナーやご家族です。
パートナーやご家族の母子への関わりが、お母さんと赤ちゃんの関係に与える影響は大きいのです。

また、地域の方へお伝えしたいことは、
お母さんを一人にしない、孤独な孤育てをさせないために、どうか力をお貸しください。
核家族化が進み、自宅で昼間、お母さんと赤ちゃんで過ごす世帯は少なくありません。子育ては母(父)や祖母(父)から子へ伝承するものだ、という考えは、今は非常に難しくなってきています。ですがその分、自らインターネットや本、講座で子育てを学んでいくお母さんもいらっしゃいます。


では、地域の力は必要ないかといったらそうではありません。
人が育っていくということは、お母さん、あるいは、家族だけの力では、難しいことです。
 私が孤育てをしていたとき、心の拠り所は『パン屋さん』でした。赤ちゃんを抱っこしていくと、『大きくなったね』とか、『今一番大変な時期だよね』と、声をかけてくれました。『かわいいね』と言われると、自分を褒めらたみたいに嬉しい。そんな何気ないやりとりは、心の支えでした。


 子育て支援は支援者でなくても、できます。私もただのお母さんです。
地域にあなたを見ている人がいるんだよというメッセージがあることは、心強いことです。

お母さんがゆっくり、お母さんと赤ちゃんのペースで、お母さんになっていく。それを見守れる マチになること。
それは、次の世代のために地域全体で取り組むべき課題であり、その先には、赤ちゃんとお母さんに限らず、安心して過ごせるマチへ繋がると感じています。

※1 産後6ヶ月までの子育て実態調査 より
期間:2020 年 10 月 16 日〜26日 対象:子育て中の女性 回答数:45名 実施主体:ママほぐ
※2 厚生労働省 平成30年度の児童虐待相談対応件数  より

子育てママの体ケアルームおきなわ屋ぁ

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